- この記事の監修者
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歯科医師。医療法人社団ピュアスマイル理事長。インビザライン ブラックダイヤモンドドクター。インビザライン世界サミット23万人いるインビザラインドクターの中からトッププロバイダーの1人に選出。
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「もしかして受け口かも」「子どもの噛み合わせが気になる」そんな不安を感じていませんか?
受け口(反対咬合)は、下の前歯が上の前歯より前に出て噛み合う不正咬合で、「見た目の問題」と思われがちですが、実は噛む力や発音、顎関節、将来的な歯の寿命にまで影響することがあります。
子供の成長期に起こるケースもあれば、大人になってから気づくこともあり、原因や重症度によって治療方法は大きく異なります。
この記事では、受け口の特徴や原因、放置するリスク、子ども・大人別の治療法について、詳しく解説します。
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- 1. 受け口(反対咬合)とは?
- 1-1. 受け口の見た目の特徴
- 1-2. 受け口のセルフチェック
- 1-3. しゃくれや下顎前突との違い
- 2. 受け口の主な原因
- 2-1. 骨格が原因(骨格性)
- 2-2. 歯並びが原因(歯性)
- 2-3. クセや習慣が原因(機能性)
- 3. 受け口を放置するリスク
- 3-1. 前歯で食べ物を噛み切れなくなる
- 3-2. 発音や滑舌に影響がでる
- 3-3. 全身への不調につながることがある
- 3-4. 見た目へのコンプレックスが強くなりやすい
- 3-5. 治療が複雑になり高額になりやすい
- 3-6. 将来的に歯を失う可能性が高まる
- 4. 受け口の主な治療法
- 4-1. 子供の受け口治療
- 4-2. 大人の受け口治療
- 4-3. 受け口で手術が必要となるケース
- 5. 受け口に関するよくある質問
- Q1. 受け口は自然に治ることはある?
- Q2. 受け口は自力で治せる?
- Q3. いつ治療を始めるべき?
- Q4. 受け口の治療は保険を使えますか?
- 6. まとめ|受け口は放置せず早めの相談を
1. 受け口(反対咬合)とは?

受け口とは、上下の前歯の噛み合わせが逆になり、下の前歯が上の前歯より前に出ている状態を指します。歯科用語では「反対咬合(はんたいこうごう)」や「下顎前突(かがくぜんとつ)」と呼ばれます。
受け口は見た目の印象に目が向きやすい噛み合わせですが、実際にはそれだけでなく、噛む力のバランスや発音、顎関節への負担など、機能面にも影響が出やすいのが特徴です。成長期の子供だけでなく、大人になってから気づくケースも少なくありません。
まずは、ご自身やお子さんが受け口に当てはまるのかどうかを確認することが大切です。
1-1. 受け口の見た目の特徴
受け口には、いくつか共通した見た目の特徴があります。
以下のポイントに1つでも当てはまる場合は、受け口かもしれません。

🔷横顔の印象
受け口の場合、下顎が前に出て見え、いわゆる「しゃくれ気味」に感じられることがあります。特に横顔のライン(Eライン)を見ると、下唇が上唇より前に位置するのが、受け口にみられやすい典型的なシルエットです。
🔷正面から見た印象
笑った際に下の歯が目立ちやすい、下顎のラインが強調されて見えるといった点が挙げられます。口元全体が前に出ているように感じる場合もあります。
見た目には個人差がありますが、横から見たときに下顎の主張が強いことは、受け口に共通する大きな特徴のひとつです。
1-2. 受け口のセルフチェック
受け口は、歯科医院での診断が必要な噛み合わせではありますが、鏡やスマホを使って簡単にセルフチェックすることも可能です。
次の3つのポイントを確認してみましょう。
① 鏡の前で前歯の位置をチェック
まず、鏡の前で歯を軽く噛み合わせた状態を確認します。
このとき、下の前歯が上の前歯より前に出ている場合は、受け口の可能性が高いと考えられます。本来は上の前歯が下の前歯をわずかに覆う噛み合わせが正常です。
② 横顔(Eライン)をチェックする
スマホで横顔を撮影し、鼻先とあご先を結んだライン(Eライン)を確認します。
下唇がEラインより前に出ている、あるいは下顎の存在感が強く見える場合は、受け口による影響が疑われます。特に横顔で下顎が前に突き出て見えるのは、受け口の典型的な特徴です。
③ 子供の場合にチェックしたい「クセ」
子供の受け口は、骨格だけでなく日常のクセや習慣が関係していることも多いとされています。
口呼吸、舌が下に落ちている状態(低位舌)、指しゃぶりや爪噛みが続いている、頬杖をよくつく、食事で片側だけ噛むといった習慣がある場合、受け口につながりやすくなります。
特に成長期は習慣の影響を受けやすいため、早期に気づくことが重要です。
1-3. しゃくれや下顎前突との違い
「受け口」「しゃくれ」「下顎前突」は混同されやすいですが、それぞれ基準となる視点が異なります。
🔴「受け口(反対咬合)」
上下の前歯の噛み合わせが逆になっている状態を指す噛み合わせの名称です。歯の位置関係に注目した歯科的な表現で、見た目に関係なく、噛み合わせの状態そのものを示します。
🔴「しゃくれ」
医学用語ではなく、見た目の印象を表す俗語です。横顔を見たときに下顎が前に突き出て見える状態を指すことが多く、噛み合わせが必ずしも受け口であるとは限りません。
🔴「下顎前突」
骨格的に下顎が前方へ成長している状態を示す医学的な診断名です。骨の成長バランスが原因となっているため、歯並びだけの問題ではなく、骨格性の受け口を伴うケースが多く見られます。
| 呼び方 | 意味 |
|---|---|
| 受け口(反対咬合) | 上下の前歯の噛み合わせが逆になっている状態 |
| しゃくれ | 見た目の表現。下顎が前に出て見える状態を指す俗称 |
| 下顎前突 | 骨格的に下顎が前方成長している医学的表現 |
見た目が似ていても、原因や治療方法は大きく異なるため、正確な判断には歯科医院での専門的な診断が欠かせません。
2. 受け口の主な原因

受け口の原因は、大きく分けて「骨格」「歯並び」「習慣(機能)」の3つに分類されます。専門的には、それぞれ骨格性・歯性・機能性と呼ばれ、どれに当てはまるかによって治療方針は大きく異なります。
一般的に、骨格性の受け口は先天的(遺伝)な影響が強いとされる一方で、歯性や機能性の受け口は後天的、つまり成長過程や生活習慣、クセの影響が大きいと考えられています。
まずは、受け口がどのタイプに該当するのかを理解することが、適切な治療を選ぶ第一歩になります。
2-1. 骨格が原因(骨格性)
骨格性の受け口は、顎の骨そのものの成長バランスによって起こるタイプです。
歯並びではなく骨格が主な原因となるため、見た目や噛み合わせへの影響が比較的大きくなりやすい特徴があります。
代表的な特徴として、下顎が過成長している、または上顎の成長が弱いといった骨格バランスの乱れが挙げられます。その結果、横顔で下顎が前に突出して見え、いわゆる「しゃくれた印象」になりやすくなります。
骨格性の受け口は、子供の頃から症状が目立ちやすく、成長とともに悪化しやすいです。多くの場合、遺伝的な要素が関係しています。
特に、子供の成長期には顎の発育の影響が強く出やすいため、早い段階で骨格の状態を把握し、必要に応じて専門的な診断を受けることが重要になります。
2-2. 歯並びが原因(歯性)
歯性の受け口は、顎の骨格には大きな問題がなく、前歯の傾きや生え方のクセによって噛み合わせだけが反対になっているタイプです。
骨格が正常でも起こるため、受け口の中でも比較的多く見られるパターンといえます。
代表的な特徴として、上の前歯が内側に傾いている、下の前歯が外側に傾いているといった歯の角度の問題が挙げられます。また、歯列の横幅が狭いことで上下の噛み合わせが逆転しているケースもあります。
歯性の受け口は、横顔の印象が大きく変わらないことが多い一方で、前歯で噛みにくい、食べ物を噛み切りにくいといった機能面の不便さが出やすいのが特徴です。骨格が原因ではないため、子供から大人まで幅広い年齢層で見られます。
骨格性とは異なり、歯の位置や傾きを整えることで改善できるケースも多く、治療方法の選択肢が比較的広い点も特徴のひとつです。
2-3. クセや習慣が原因(機能性)
機能性の受け口は、口周りのクセや日常の生活習慣が影響して起こるタイプです。
骨格や歯並びそのものに大きな問題がない場合でも、長期間の習慣によって噛み合わせが反対になることがあります。特に子供に多く、早期に気づいて対処することで改善できる可能性が高いです。
受け口につながりやすい代表的なクセとして、舌で前歯を押すクセ(舌癖)や口呼吸が挙げられます。
また、頬杖をつく、片側ばかりで噛む、猫背姿勢が続くといった日常動作も、顎の位置や噛み合わせに影響を与えやすくなります。唇を噛むクセや、うつ伏せ寝・横向き寝、指しゃぶりが長く続いている場合も注意が必要です。
さらに、柔らかい物ばかりを食べる食習慣も、顎の発達を十分に促せず、噛み合わせのバランスを崩す要因になります。特に子供の成長期は骨が柔らかいため、舌の位置・呼吸・姿勢といった習慣が骨格の成長に影響しやすい時期です。
機能性の受け口は、クセや生活習慣を見直すことで悪化を防げる場合もあります。そのため、噛み合わせだけでなく、日常の行動まで含めて確認することが大切です。
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3. 受け口を放置するリスク

受け口は見た目の問題だけでなく、噛む機能や発音、顎や全身の不調につながることもある噛み合わせです。
放置することで日常生活への影響が広がり、将来的に治療が複雑・高額になりやすい点にも注意が必要です。
3-1. 前歯で食べ物を噛み切れなくなる
受け口は前歯の噛み合わせが逆転しているため、食べ物を前歯でうまく噛み切れない状態になりやすいです。見た目以上に、日常の食事で不便を感じている方も少なくありません。
よくある症状として、サンドイッチや麺類が噛み切れない、前歯に力が入りづらい、噛もうとすると食べ物が逃げてしまうといった問題が挙げられます。その結果、前歯で噛めない分、奥歯に噛む力が集中しやすくなります。
奥歯への負担が続くと、歯の摩耗や欠けが起こりやすくなり、虫歯のリスクも高まります。
さらに噛み合わせのバランスが崩れることで、将来的に歯が割れたり、歯を支える力が弱くなったりする可能性もあります。
このように、噛む力の偏りは歯の寿命を縮める原因になります。
3-2. 発音や滑舌に影響がでる
受け口では、前歯の噛み合わせが逆になっている影響で、舌の位置が不安定になりやすく、発音に支障が出ることがあります。
歯と舌の位置関係がうまく合わないことで、空気の流れが乱れやすくなるためです。
特に影響が出やすいのが、サ行やタ行といった音です。これらの発音では前歯と舌の細かな位置調整が必要になるため、音がこもったり、息が漏れやすくなったりする傾向があります。
その結果、会話の中で聞き返されることが増えたり、発音に自信が持てず話すこと自体が苦手になったりと、心理的な負担につながるケースもあります。
受け口は、見た目だけでなく、こうしたコミュニケーション面にも影響を及ぼす可能性があります。
3-3. 全身への不調につながることがある
受け口は噛み合わせのバランスが崩れているため、顎関節や咀嚼筋に過度な負担がかかりやすいです。
その影響が、口元だけでなく全身の不調として現れることがあります。
起こりやすい症状としては、口を開けにくい、顎を動かすとカクカク音がするといった顎関節症の症状が挙げられます。
また、顎周りの筋肉の緊張が続くことで、頭痛や肩こりが起こったり、姿勢が乱れ、猫背になりやすくなることもあります。
これらの不調は、噛み合わせのアンバランスを体が無意識に補正しようとすることで生じるものです。すべての受け口の人に起こるわけではありませんが、噛み合わせと全身の筋骨格バランスには関連があると考えられており、放置することで慢性的な不調につながる可能性もあります。
受け口は、歯並びだけの問題と捉えず、体全体への影響も含めて考えることが大切です。
3-4. 見た目へのコンプレックスが強くなりやすい
受け口は、横顔や口元のバランスに影響しやすく、下顎が前に出たように見えることで、しゃくれ気味の印象になることがあります。
そのため、特に横顔のライン(Eライン)に対してコンプレックスを抱きやすい噛み合わせです。
見た目の変化は本人にとって気になりやすく、思春期の子供では自己肯定感の低下につながることもあります。
また、人前に立つ機会が多い方の場合、口元を気にして笑顔を控えたり、話すことに自信を持てなくなるケースも少なくありません。
このように、受け口は心理面や対人関係にも影響を及ぼしやすい噛み合わせといえます。
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3-5. 治療が複雑になり高額になりやすい
受け口は、放置するほど治療の選択肢が狭くなりやすい噛み合わせです。年齢によって治療の難易度が大きく変わります。
子供の場合、成長期であれば顎の骨がまだ柔らかく、成長をコントロールしながら治療できるため、比較的シンプルな矯正装置で改善できる場合があります。しかし、成長が進むにつれて骨の柔軟性が低下し、中学生以降になると治療の難易度は一気に上がります。
一方、大人の場合は顎の骨の成長がすでに完了しているため、矯正治療だけでは改善が難しく、外科矯正(手術)を併用しなければならないケースもあります。その結果、治療期間が長くなり、費用も高額になりがちです。
受け口は、今は軽度に見えても、放置することで徐々に状態が進行しやすい噛み合わせです。
将来的な負担を減らすためにも、早めに専門的な診断を受けることが重要です。
3-6. 将来的に歯を失う可能性が高まる
受け口は噛み合わせが逆転している影響で、前歯で十分に噛めず、その分の力が奥歯に集中しやすいです。この状態が長く続くと、奥歯に過剰な負担がかかり、歯の寿命に影響することがあります。
実際、「8020運動」(80歳で20本以上の歯を残す)の調査研究では、受け口の人はほとんど見られなかったと報告されています。これは、受け口を放置することで、将来的に歯を失うリスクが高まることを示唆しています。
前歯が噛み合っていない状態では、噛む力の多くを奥歯だけで受け止めることになり、奥歯1本あたりにかかる負担が3kg〜4kgにもなるとされています。このような負荷が長期間続くと、歯が摩耗したり、欠けたり、最悪の場合は折れてしまうこともあるのです。
受け口は見た目や噛みにくさだけでなく、長期的に歯を守るうえでも注意が必要です。将来の歯の本数を守るためにも、早めに噛み合わせを整えることが重要といえます。
4. 受け口の主な治療法
受け口(反対咬合)の治療方法は、年齢や原因(骨格性・歯性・機能性)、症状の重さによって大きく異なります。
適切な治療を選ぶためには、まず自分の受け口がどのタイプに当てはまるのかを正確に把握することが重要です。
4-1. 子供の受け口治療

子供の受け口は、放置すると成長とともに骨格的な問題が強くなりやすいため、早期に介入することで改善できる可能性が高まります。成長段階に応じて治療方法が変わるのが特徴です。
🔷3〜6歳頃
この時期は、受け口の原因となる口腔習癖の改善が中心になります。舌のクセや口呼吸を整えるために、MFT(口腔筋機能療法)や、就寝時に装着するムーシールド、プレオルソなどの予防矯正装置を用いて噛み合わせを誘導します。骨が非常に柔らかく、最も改善しやすい時期です。
🔷6〜10歳頃
永久歯が生え始める時期には、上顎の成長を促す治療が行われます。拡大装置や機能的矯正装置、フェイシャルマスク(上顎前方牽引装置)を用いて、上顎と下顎の前後バランスを整え、骨格的なズレの進行を抑えます。
🔷10〜12歳頃
永久歯への生え替わりが進むこの時期は、歯の位置や傾きを整える矯正治療へ移行します。ワイヤー矯正やマウスピース矯正を併用し、噛み合わせを仕上げていく段階です。
子供の骨は柔らかく、骨格そのものにアプローチできる唯一の時期といえます。早く治療を始めることで、将来的に外科矯正を避けられて、治療期間や費用も大人になってから治すより抑えられる場合が多いです。
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4-2. 大人の受け口治療

大人の場合、顎の骨の成長がすでに完了しているため、骨格そのものを大きく変えることは難しく、歯並びの移動を中心とした矯正治療が基本となります。受け口の原因や重症度によって、選択される治療法が異なります。
🔵マウスピース矯正
透明で目立ちにくく、取り外しができるため口腔ケアがしやすいのが特徴です。前歯の傾きが原因となっている軽度の受け口(歯性)であれば、マウスピース矯正で改善できるケースもあります。
ただし、骨格性の要素が強い受け口では、マウスピース単独での改善は難しい場合があります。治療期間はおおよそ1年〜2年半、費用は60万円〜100万円程度が目安です。
🔵ワイヤー矯正
最も一般的な矯正方法で、症例数が多く、歯の細かい動きやコントロールに優れています。中等度以上の受け口では、第一選択となることが多い治療法です。
装置が目立ちやすく取り外しができない点がデメリットですが、裏側矯正(リンガル矯正)やハーフリンガルなど、見た目に配慮した選択肢もあります。治療期間は1年半〜3年程度、費用は60万円〜130万円程度が一般的です。
🔵抜歯を伴う治療(症例による)
受け口の状態によっては、歯列のスペース確保や噛み合わせの調整のために、抜歯が必要となるケースもあります。抜歯の有無は、歯の大きさや並び、顎のバランスを総合的に判断して決定されます。
大人の受け口治療は、原因の見極めと治療計画の精度が結果を大きく左右します。そのため、矯正治療の経験が豊富な歯科医師による精密診断が欠かせません。
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4-3. 受け口で手術が必要となるケース
骨格性の問題が大きい場合、歯列矯正だけでは噛み合わせや見た目を十分に改善できないことがあります。そのようなケースでは、外科手術を併用する外科的矯正治療(外科矯正)が選択肢となります。
外科矯正が必要と判断される多くの場合、「顎変形症」という診断名が付き、一定の条件を満たせば健康保険が適用されます。
そのため、自由診療の矯正治療よりも、結果的に費用負担が抑えられるケースもあります。外科矯正は、受け口の根本的な骨格のズレを改善できる治療法です。
手術は大学病院や基幹病院で行われることが多く、術前検査から入院、手術までに数週間を要する場合があります。全身麻酔下で行われるため、心理的な不安を感じる方もいますが、事前に十分な説明と準備が行われます。
手術が必要と判断される主なケース
✅下顎が大きく前に突き出している
✅上顎が後方に引っ込んでいる
✅顎の骨格差が大きく矯正治療だけでは対応できない
主にこのようなケースで外科手術が必要になります。
また、顔の左右差(非対称)が強い場合や、発音・噛む機能が著しく低下している場合も、外科矯正が検討されます。
🔷外科矯正の一般的な治療の流れ
外科矯正は、いきなり手術を行うわけではなく、事前準備から術後の仕上げまで段階的に進む治療です。
一般的な流れは次のとおりです。
1. 精密検査・診断
レントゲンやCT撮影、口腔内スキャンなどを行い、顎の骨格や噛み合わせの状態を詳細に分析します。ここで外科矯正が本当に必要かを判断します。
2. 術前矯正(歯列矯正)
手術後に正しい噛み合わせになるよう、あらかじめ歯の位置を整えます。期間は数か月〜1年以上かかることもあります。
3. 外科手術(顎矯正手術)
大学病院や基幹病院で、全身麻酔下にて上顎骨や下顎骨の位置を調整する手術を行います。入院期間は1〜2週間程度が一般的です。
4. 術後矯正(仕上げ矯正)
手術後の噛み合わせを最終的に整えるため、再度矯正治療を行います。噛み合わせの安定を確認しながら微調整します。
受け口は、骨格性・歯性・機能性のどれが主な原因かによって治療方法が大きく異なります。
自己判断は難しいため、外科矯正も含めた選択肢を正しく検討するには、矯正専門医による診断を受けることが重要です。
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5. 受け口に関するよくある質問

受け口については、「自然に治るのか」「いつ治療を始めるべきか」「保険は使えるのか」など、不安や疑問を感じる方も多い噛み合わせです。
ここでは、受け口に関してよくある質問をわかりやすく解説します。
Q1. 受け口は自然に治ることはある?
A. 結論からいうと、自然に治る可能性があるケースは一部に限られます。多くの場合は放置すると悪化しやすいです。
自然に治りやすいのは、乳歯期の一時的な受け口や、舌癖・口呼吸などの習慣が原因となっている軽度のケースです。これらは成長とともに改善したり、クセを直すことで自然に治ることもあります。
一方で、骨格性の受け口や、家族に受け口の人が多いケース、永久歯に生え替わっても受け口が続いている場合は、自然に治る可能性は低いでしょう。
特に成長とともに下顎が前に出てくるタイプは、放置するほど症状が強くなりやすいのが特徴です。
「様子を見るべきか」「治療が必要か」の判断は自己判断が難しいため、気になる場合は早めに歯科医院で診断を受けることが大切です。
Q2. 受け口は自力で治せる?
A. 完全に自力で治すことはできません。
受け口は噛み合わせの逆転が起きている状態のため、根本的な改善には歯列矯正や専門的な治療が必要です。
ただし、日常生活の中で次のような取り組みを行うことで、悪化を防ぐ・進行を抑える効果は期待できます。鼻呼吸を意識すること、舌を正しい位置に保つためのMFT(口腔筋機能療法)、頬杖や姿勢の改善、よく噛む習慣を身につけることなどが挙げられます。
これらはあくまで補助的な対策であり、噛み合わせが逆になっている状態そのものを治すことはできません。受け口が気になる場合は、自己流で対応しようとせず、歯科医院での診断を受けることが重要です。
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Q3. いつ治療を始めるべき?
A. 子供の場合は、3〜10歳頃(混合歯列期)が治療を始めるベストタイミングとされています。
この時期は顎の骨が柔らかく、骨格の成長をコントロールしやすいため、矯正装置だけで改善できる可能性が高く、将来的に外科手術を回避できることもあります。
一方、大人の場合は気づいたときが治療の始めどきです。受け口は成長や時間の経過とともに進行しやすい不正咬合のため、放置期間が長くなるほど治療が複雑になり、費用や期間も増えてしまいます。
年齢に関わらず、早めに相談することで治療の選択肢が広がり、結果的に負担を抑えられる可能性が高まります。
Q4. 受け口の治療は保険を使えますか?
A. 受け口の治療で健康保険が適用されるのは、骨格性の問題が強く、外科的矯正治療(外科矯正)が必要と診断されたケースのみです。
この場合、「顎変形症」という診断名が付き、手術および術前・術後の矯正治療が保険適用となります。
一方で、歯並びが原因による受け口や、クセ・生活習慣が関与する機能性の受け口は、基本的に保険適用外となり、マウスピース矯正やワイヤー矯正は自費診療になります。
保険が使えるかどうかは自己判断が難しいため、受け口が気になる場合は、矯正歯科や口腔外科での精密検査・診断を受けることが重要です。
6. まとめ|受け口は放置せず早めの相談を
受け口(反対咬合)は、見た目の問題だけでなく、噛み合わせ・発音・顎関節・歯の寿命にまで影響する不正咬合です。
主な原因は、骨格性(顎の成長バランス)・歯性(歯の傾きや位置)・機能性(口呼吸や舌癖などの習慣)の3つに分けられ、原因によって治療方法や難易度は大きく異なります。
そのため、受け口の改善には「どのタイプの受け口なのか」を正しく知ることが第一歩です。軽度に見えても放置するほど治療が複雑になりやすいため、「今は大丈夫」と自己判断せず、早めに専門的な診断を受けることが重要です。
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