オープンバイトの矯正治療の費用は？保険適用の有無

矯正を検討している方の多くが、最初に気になるのは「治療にかかる費用」ではないでしょうか。
矯正治療は基本的に自由診療となるため、費用が高額になりやすく、具体的な金額がわからないまま治療をためらってしまう方も少なくありません。

しかし、治療法の選択によって費用に大きな差があることや、保険適用の可能性があるケースについてはご存知でしょうか。

歯並びは見た目の問題だけでなく、発音や咀嚼機能に影響を与えることがあります。
中でも“オープンバイト”と呼ばれる歯並びの方は、矯正によって大きく生活の質をあげることができるかもしれません。

今回は、そんなオープンバイトの原因から治療法の種類ごとの特徴、さらには費用の目安や保険適用の条件などを紹介していきます。

オープンバイトとは、上下の前歯がしっかりと噛み合わず、前歯の間に隙間ができてしまう噛み合わせの異常を指します。
専門的には「開咬（かいこう）」と呼ばれ、不正咬合の一種として分類されます。

歯並びがオープンバイトの場合、普段の生活において、どのような影響があるのでしょうか。

オープンバイトの場合、まず気になるのが見た目の違和感ではないでしょうか。
正面から見ると、前歯の隙間によって表情が締まりにくく、話しているときや笑ったときに違和感を感じる人も多くいます。
特に写真に写った際など、自分の口元にコンプレックスを感じるケースも少なくありません。

見た目だけではなく、機能面にもさまざまな影響があります。
オープンバイトでは前歯で食べ物をしっかり噛み切ることが難しくなるため、自然と奥歯に負担が集中します。
その結果、奥歯の摩耗が進んだり、顎関節に痛みを感じたりすることがあります。
咀嚼効率の低下は、消化や栄養吸収にも間接的に悪影響を及ぼします。

さらに、発音にも支障が出る場合があります。
特に「サ行」や「タ行」の発音がしづらくなり、人によっては滑舌が悪く聞こえてしまうこともあります。
話し方に自信を持てなくなり、対人関係にストレスを感じる原因になることもあるでしょう。

また、オープンバイトの方は口を自然に閉じにくいため、口呼吸が習慣化しやすいという特徴があります。
口呼吸は口腔内を乾燥させ、虫歯や歯周病のリスクを高める要因です。
さらに、慢性的な口呼吸は睡眠の質や全身の免疫機能にも影響を及ぼすことが分かっています。

オープンバイトは、さまざまな要因によって引き起こされます。
生活習慣や癖だけでなく、遺伝や骨格的な影響も大きく関係しているため、まずは患者さん自身が原因を正しく理解することが治療を考えていく上で非常に重要になります。

オープンバイトの最も代表的な原因の一つが、幼少期の「指しゃぶり」や「舌で前歯を押す癖（舌突出癖）」です。
これらの習慣が長期間続くと、歯列の発達に悪影響を及ぼし、歯が本来の正しい位置に並ばなくなります。

その結果、上下の前歯に隙間ができる「開咬（オープンバイト）」が形成されやすくなります。
特に成長期にこれらの癖が続いていると、顎の発育にも影響を及ぼし、噛み合わせ全体にゆがみを生じさせてしまうケースが少なくありません。

もうひとつ大きな原因として考えられているのが、口呼吸の習慣です。
鼻炎やアレルギー性鼻炎、アデノイド肥大などによって鼻呼吸が困難になると、人は自然と口で呼吸するようになります。
口呼吸が習慣化すると、舌の位置が下がり、上顎が適切に成長しにくくなることでオープンバイトを誘発することがあるのです。

また、口周りの筋肉のバランスも崩れやすくなり、結果として上下の歯の噛み合わせがうまくいかなくなってしまうのです。

生活習慣とは無関係に、骨格のバランスが原因となるケースもあります。

たとえば、下顎が過度に発達していたり、反対に上顎の成長が不十分だったりすると、前歯同士の接触が阻害され、オープンバイトが発生することがあります。

このような骨格的な問題は、遺伝的な要素が関与していることが多く、矯正治療だけでは十分な改善が難しい場合もあります。
重度のケースでは、外科的処置（外科矯正）が必要になることもあります。

オープンバイトの矯正治療は、その原因や症状の程度によって選択肢が大きく異なります。
軽度なものであれば比較的簡単な矯正で対応可能ですが、重度のケースや骨格的な異常を伴う場合には、外科手術を含めた本格的な治療法が求められます。

主な矯正治療方法について、特徴を紹介していきます。

比較的軽度から中程度のオープンバイトに対しては、透明なマウスピース型矯正装置（たとえばインビザラインなど）での治療が有効な場合があります。

マウスピース矯正の装置は取り外しが可能であるため、食事や歯磨きがしやすく、生活への影響が少ないという点が大きなメリットです。

さらに、透明で目立ちにくいため、接客業や人前に出る機会の多い方でも治療を継続しやすいのが特徴です。

ただし、歯の動きに限界があるため、症状が進行している場合や骨格的な問題を含む場合には適応外となることもあります。

中〜重度の開咬に対しては、従来のワイヤー矯正が第一選択となることが多いです。
ワイヤー矯正は、歯にブラケットとワイヤーを装着し、少しずつ歯を理想的な位置に動かしていく方法で、多くの症例に対応可能です。

最も一般的なのは「表側矯正」と呼ばれる、歯の表面に装置をつけるタイプです。
費用は比較的抑えられており、治療実績も豊富です。
しかし見た目が気になる方にとっては、審美的なストレスを感じることもあるでしょう。

そのような方には「裏側矯正（リンガル矯正）」という選択肢もあります。
これは歯の裏側に装置を装着するため、外からはほとんど見えないという利点があります。
ただし、構造が複雑なため治療技術を要し、費用も高くなる傾向があります。

骨格の問題が原因で開咬が起きている場合には、矯正治療だけでは十分な効果が得られず、「外科的矯正治療」が必要になるケースもあります。
外科的矯正は「顎変形症」と診断されることで、健康保険が適用される場合があります。

外科治療では、顎の骨を切って位置を調整する手術を行い、その後に矯正装置を用いて微調整を行います。
術前・術後の準備や入院が必要となり、身体的・精神的な負担は大きくなりますが、見た目と機能の両面で根本的な改善が期待できる治療法です。

オープンバイト（開咬）の矯正治療にかかる費用は、選択する治療法によって大きく異なります。

治療の複雑さや装置の種類、さらには担当する歯科医院の方針によっても違いが生じるため、あくまで「相場」にはなりますが、以下に矯正方法ごとの費用相場を紹介していきます。

透明なマウスピース矯正（たとえばインビザライン）は、目立ちにくく取り外しが可能という点から人気があります。
しかしその分、装置の作製や管理に手間がかかるため、費用はやや高めに設定されているのが一般的です。

おおよその総額としては、70万円〜100万円ほど。
しかし、見た目や日常生活への影響を最小限にしたい方にとっては、費用以上の価値を感じられる治療法といえるでしょう。

矯正方法の中で、最もスタンダードな方法である「表側ワイヤー矯正」は、治療実績も豊富で多くのクリニックで提供されています。

費用の相場は60万〜90万円程度です。
他の方法と比べて費用を抑えやすい傾向があります。

裏側矯正（リンガル矯正）は、歯の裏側に装置を装着するといった審美性に優れる一方で、装置の作製や装着には高度な専門技術が求められるため、治療費は高くなる傾向があります。

費用の目安としては、100万〜150万円程度が相場となります。
審美面を重視する方にとっては理想的な選択ですが、すべての歯科医院で対応しているわけではないため、事前に確認が必要です。

骨格的な異常を伴う重度のオープンバイトに対しては、顎の骨を切るなどの外科的処置を併用した「外科矯正」が必要になる場合があります。
この場合の費用は、手術費用と術前・術後の矯正治療費を合わせて100万〜250万円程度になることもあります。

正治療は多くの場合「自由診療」に該当し、健康保険の対象外となります。
しかし、先述したような「顎変形症」など、特定の条件を満たすことで保険が適用されるケースや、医療費控除によって経済的負担を軽減できる制度も存在します。

一般的な歯列矯正では健康保険は使えませんが、先述した「顎変形症」と診断された場合には例外となります。
たとえば、上下の顎の骨格に大きなズレがあり、日常生活に支障をきたすような場合には、外科手術を伴う矯正治療が保険の対象となります。

この治療を受けるには、顎口腔機能診断施設の指定を受けた医療機関での診断と治療が必要です。

保険が適用されれば、自己負担は原則として3割負担（子どもの場合は2割）となり、通常であれば100万円を超える治療費が数十万円に抑えられる可能性があります。

もうひとつ確認しておきたいのが「医療費控除」が活用できるかどうかです。
医療費控除は、年間で支払った医療費が10万円（または所得の5％）を超える場合に、確定申告によって所得税の還付を受けられるという制度です。

矯正治療の場合、治療の目的が「審美」ではなく「機能回復（噛み合わせ改善など）」の場合は、この医療費控除の活用が原則として認められます。

とくに子どもの矯正や、咀嚼や発音に問題のある症例に対しては、ほとんどの場合で控除対象になります。

また、申告時には家族全員の医療費を合算して申請することができるため、世帯全体での負担軽減にもつながります。
領収書や明細書の保管は必須となるので、治療を開始する前からこまめに記録を残しておくと安心です。

オープンバイトの矯正治療は、見た目のコンプレックスを解消するだけでなく、食事や会話といった日常生活の質を大きく改善することにつながります。
矯正治療には高額な費用がかかることが多く、簡単に踏み切れるものではありません。

しかし、長期的に見れば健康面や自信の向上といったかけがえのない価値を得られる治療でもあります。

治療方法や費用、保険適用の有無などを正しく理解し、自分に最も合った矯正計画を立てることが重要です。
矯正歯科のカウンセリングを受けて検討し、無理のない範囲で治療を始めてみてはいかがでしょうか。