
前回、ローコストマウスピース(以下、LCM)のパイオニア「Smile Direct Club(スマイルダイレクトクラブ)」について紹介しました。
その安さとお手軽さが注目されましたが、うまく歯が動かないなどのトラブルが続出し、2023年に破綻してしまいました。
Smile Direct Clubについて詳しくはこちらをご覧ください。
これとよく似たケースを、もうひとつご紹介します。
「Candid(キャンディッド)」です。
通院不要?!アメリカのLCM「Candid(キャンディッド)」とは?

「Candid(キャンディッド)」はアメリカのローコストマウスピース(LCM)の代表的なメーカーの一つです。
2017年に設立され、通院不要で、自宅で矯正治療ができる「お手軽な」サービスとして人気を集め、約10万人がCandidによる矯正治療を受けています。
しかし、2022年にCandidは矯正治療のサービスを終了しました。
またひとつ、アメリカのLCMが無くなってしまいました。
ローコストマウスピース(LCM)って?

歯科矯正大国アメリカでは「Candid」だけでなく、実に多くのローコストマウスピースがありました。
「Smile Direct Club」「Byte」「AlignerCo」などその数、ピーク時には10社以上にも上りました。
これらのマウスピース矯正には、共通した特徴がありました。
・治療費が「安い」
・前歯の治療が中心(軽度~中度)
・通院回数が「少ない」(通院不要の場合も)
「気になる前歯だけ、早く安く治療を終わらせたい」という方にとってメリットの多い治療のように感じますよね。
しかし、少し冷静に考えてみてください。
ローコストマウスピース(LCM)はほとんど歯科医師が関わらないで治療が進んでいきます。
治療の経過を歯科医師に診てもらう機会が極端に少ないです。
そのため、さまざまな問題が起こっています。
この問題は日本の矯正治療の学術団体「公益社団法人 日本矯正歯科学会」も強くメッセージを発しています。
注意!日本の矯正学会も「リスク」を指摘

日本矯正歯科学会は、次のような声明を発表しています。
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インターネット上で、歯科医師が介在しない形でマウスピース型製品が販売され、歯列の改善への有効性を謳うケースが出てきています。
矯正歯科治療は、正確な診断や精密な治療計画に立脚して行われるべき医療行為であり、誤ったマウスピース型製品の使用は予期せぬ大きな問題を引き起こす可能性があります。
患者自身の独自の判断でこれらの製品を使用し歯の移動を行うことは、歯科医学的にも非常に危険であるため絶対に避けてください。
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(公益社団法人 日本矯正歯科学会 ポジションステートメント マウスピース型矯正装置による治療に関する見解 第一版 2019年6月5日)
「絶対に避けてください」という強い言葉を使用していることから、いかに危険な治療であるかを示していると思います。
今、SNSやホームページ等で、マウスピース矯正を勧誘する多くのメッセージがありますが、
「日本矯正歯科学会の見解」からも慎重に信頼できる歯科医院を選ぶことが求められていると思います。
そのためには、次のことが大切です
・矯正治療を受ける際は「適切な矯正治療」を行っている歯医者さんで「診断と管理」ができるところを選ぶ。
・価格だけでなく「安全性と治療結果」を考えて、歯医者さんを選ぶ。
‣ 「通院不要」「格安」といった広告に惑わされず、治療のリスクを確認する。
マウスピース矯正の学会の見解について、さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
「3つのポイント」で安心/安全なマウスピース矯正を!

マウスピース矯正は目立ちにくく自分で取り外しができる、というワイヤー矯正にはなかったメリットのある治療法です。
しかし、その中にはローコストマウスピース(LCM)と呼ばれる「安くて早い」だけを売りにした、リスクの高いサービスが紛れています。
ローコストマウスピースは、前歯しか動かない、噛み合わせが悪くなる、顎関節症になってしまうなどの大きな問題を引き起こす場合があります。
せっかく治療費を払って治療を行っても満足できる「治療成果」を得られなければ意味がありません。
勘違いして欲しくないのですが、マウスピース矯正が良くない矯正治療というわけではなく、
問題を引き起こしてしまう「ローコストマウスピース」と呼ばれるような矯正があるということです。
安全/安心にマウスピース矯正を行うためには、次の「3つのポイント」を確認していただきたいと思います。
ポイント1 信頼できる「マウスピース」を使用
マウスピース矯正装置を扱うメーカーは世界中に100社以上あると言われていて、その品質は「玉石混交」です。
世界中で使用され、世界中のドクターから信頼を得ている「マウスピース」をお勧めします。
世界3大ブランドは以下のマウスピースです。
治療を受ける歯科医院がどこのマウスピースメーカーを採用しているか、事前にしっかり確認しましょう。
ポイント2 矯正歯科医の「経験」の確認
信頼できる矯正歯科医を見極めるポイントとして、
マウスピース矯正の「症例数」についてチェックすると良いでしょう。
症例数が多いほど、様々なケースを経験していますし、それが「実力の証」とも言えます。
また、インビザラインには「認定制度」があります。
これらの資格は矯正治療の知識や技術をアップデートしていかなければ得られません。
クオリティの高い治療を受けたい方は、歯科医師が持っている資格に注目してみましょう。
また、担当ドクターが「何年」治療をしてきたのか、これまでどのような「ケース」を治療してきたのかを事前に確認することで、自分が納得できる治療を受けられます。
ポイント3 きちんと「通院」して治療する
歯の動き方やスピードには個人差があります。
歯科医師の指示の下、定期的に通院することが大切です。
3ヶ月に1回程度、年に4回、クリニックに行くだけで、
今後、一生付き合っていく「歯を守る」ことができます。
マウスピース矯正を検討中の方は、この3つのポイントを押さえて治療をスタートしましょう!