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「矯正用のアンカースクリューが痛すぎる」と感じる原因と対処法をわかりやすく解説

湊 寛明
湊 寛明
この記事の監修者 

歯科医師。医療法人社団ピュアスマイル理事長。インビザライン ブラックダイヤモンドドクター。インビザライン世界サミット23万人いるインビザラインドクターの中からトッププロバイダーの1人に選出。
https://purerio.tokyo/

歯の矯正に使用するアンカースクリューとは、矯正治療の効率を高めるために顎の骨に埋め込むチタン製の小さなネジのことです。

顎の骨に埋入したアンカースクリューを固定源とすることで、歯をより正確かつスムーズに移動させることが可能になります。

 

アンカースクリューによる矯正方法では、顎の骨にネジを埋め込むことから、「痛みをともなう」というイメージを持たれがちです。

しかし、骨には痛覚がないこと、施術時には麻酔を使用することから、アンカースクリューによる痛みは比較的少ないとされています。

 

一方で、アンカースクリューにより痛みが生じるケースもゼロではありません。場合によっては、強い痛みが出るおそれもあることに注意が必要です。

 

この記事では、アンカースクリューの基礎知識痛すぎると感じる主な原因痛みを抑えて安全にアンカースクリューを使用するためのポイントを解説します。

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1. 歯科矯正で用いるアンカースクリューの基礎知識

アンカースクリューによる痛みについて理解するには、まず、歯科矯正用のアンカースクリューがどのようなものであるか把握することが重要です。

 

ここでは、アンカースクリューについての基本的な情報や、アンカースクリューを用いた歯科矯正の特徴・メリットについて紹介します。

1-1. アンカースクリューとは

アンカースクリューとは、矯正治療を効率的に進めるために使用するチタン製の小さなネジのことです。

 

アンカースクリューを使用した矯正治療では、まずアンカースクリューを顎の骨に直接埋め込み、歯を動かすための固定源とします。

これにより、目的の歯だけを動かすことや、以前は難しいとされていた歯の複雑な移動をサポートすることが容易になります。

また、目的の歯を効率的に動かせるため、治療期間の短縮も見込めるでしょう。

 

アンカースクリューは、直径2mm以下、長さ6~10mmほどの非常に小さな装置です。治療が終われば取り除かれ、傷跡が残る心配もありません。

このように、治療効率が高く身体への侵襲性も比較的低いことから、アンカースクリューは矯正治療の補助的な固定装置として近年多くの歯科クリニックで導入されています。

1-2. アンカースクリューの特徴

アンカースクリューを使った矯正治療は、1990年代後半に登場した比較的新しい手法です。

この治療方法はインプラント矯正とも呼ばれますが、人工歯根と一体になった義歯を失った歯の代わりに埋め込む「インプラント治療」とは別物であることに注意しましょう。

 

アンカースクリューを使用した矯正治療では、顎の骨にアンカースクリューを直接埋め込むため痛みが強いと思われがちですが、実は矯正治療のなかでは比較的痛みが少ないとされています。

 

主な理由は以下のとおりです。

 

🔵骨には痛覚がないため:

骨には痛みを感じる神経がなく、痛覚もありません。アンカースクリューを骨に埋め込む際にも、骨自体には痛みが生じないため、埋入時に痛みをあまり感じない方がほとんどです。

 

🔵埋入時には麻酔を使用するため:

歯茎には痛覚がありますが、埋入時には局所麻酔を使用するため痛みを感じる心配はほとんどありません。麻酔の量は少量で済み、処置も数分で終わります。

 

🔵撤去時も痛みは少ないため:

役割を終えたアンカースクリューを外す際も、痛みをともなわないケースがほとんどであるため、無麻酔もしくは、ごく少量の麻酔で済みます。外した後に痛みが出ることもほとんどありません。歯茎も数日で治癒します。

 

なお、現在の矯正治療で使用されているアンカースクリューは、1本あたり5~15分程度で埋め込むことが可能です。

施術の際にも出血や腫れはほとんど生じないため、身体への負担も少ないといえるでしょう。

 

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1-3. アンカースクリューのメリット

アンカースクリューを用いた矯正治療の大きなメリットとして、動かしたい歯だけを効率的に動かせることが挙げられます。

 

歯科における矯正方法には、アンカースクリューを用いるインプラント矯正のほか、ブラケットという装置とワイヤーを用いる「ワイヤー矯正」があります。

ワイヤー矯正は、歯に付けたブラケットが互いに引っ張り合って歯を動かす矯正方法です。ワイヤー矯正には「歯列全体の矯正に適している」というメリットがある一方、動かしたくない歯まで動いてしまうリスクもありました。

 

一方、アンカースクリューを併用して矯正を行なう場合、アンカースクリューが固定源となり、さまざまな方向から歯を引っ張れるようになります。

これにより、特定の歯だけを効率的に動かしたい場合や、奥歯とは異なる方向に前歯を動かしたい場合、一部の歯を逆方向に動かしたい場合、垂直的な歯の移動を行ないたい場合など、これまで難しいとされていた複雑な歯の動きも実現できるようになりました。

 

また、アンカースクリューの使用により歯にかかる力を継続的にコントロールできるようになるため、治療期間を短縮することも期待できます。

さらに、以前は外科手術が必須だった難しい症例においても、アンカースクリューの活用によって手術を回避し、矯正治療を進められるケースも増えてきました。

 

患者さんの負担軽減という点から見ても、アンカースクリューによる矯正治療には大きなメリットがあるといえるでしょう。

2. アンカースクリューが痛すぎると感じる主な原因

痛みが少ないとされているアンカースクリューによる痛みが強いと感じる場合、いくつかの原因が考えられます。

 

ここでは主な原因を見ていきましょう。

2-1. 歯根が損傷している

アンカースクリューは通常、歯根を避けて埋め込まれるため、歯根には損傷が起こりません。

しかし、埋入時のトラブルやミスにより、ネジの先端が歯根に当たって損傷することがあります

 

こうしたリスクを避けるためには、アンカースクリューを用いた治療の経験が豊富なクリニックを選ぶことが大切です。

歯科用3次元のレントゲン写真CTを採用しているクリニックであれば歯根の位置を詳細に把握できる可能性が高いため、歯根の損傷を最小限に抑えられるでしょう。

2-2. 口内炎ができている

インプラント矯正の治療期間中は、埋入したアンカースクリューの突起部分が頬や舌に擦れることも少なくありません。

その結果、擦れた部分で口内炎ができ、ヒリヒリと痛むことがあります。

 

アンカースクリューが頬や舌に擦れて痛みを感じる場合、アンカースクリューの装着時にクリニックから渡される保護用のワックスを使いましょう。

保護用のワックスは粘土状で、痛みがある部分のアンカースクリューに貼り付けて使用することで擦れを軽減することが可能です。口内炎の悪化予防にもつながるでしょう。

2-3. 患部の炎症・感染が起きている

口腔内の衛生環境が悪く、アンカースクリューの周りに汚れがたまっていると、細菌感染が起こる可能性が高まります。

細菌感染が発生すると、炎症や腫れといった症状が表れることも少なくありません。

 

汚れがかなりたまっていない限り、強い炎症が出ることはほとんどありませんが、痛みとともに熱がある場合は特に注意が必要です。早めにクリニックを受診しましょう。

2-4. アンカースクリューが脱落している

アンカースクリューはもともと外すことを前提に埋入するため、ネジ部分には骨と結合するシステムはありません。

物理的な力によって骨の中に埋め込まれ、生体内で受容されているだけの状態であることを押さえておきましょう。

 

したがって、骨の環境や状態、アンカースクリューの埋入具合などによっては、アンカースクリューが安定せず、ぐらついたり抜け落ちたりすることがあります。

 

アンカースクリューの脱落率は10~30%程度あるともいわれています。

アンカースクリューが脱落したままの状態を放置すると、口腔内が傷つき痛みにつながる可能性があるため、すぐにクリニックを受診してください。

 

なお、アンカースクリューが脱落した際には、別の場所に再埋入する処置が施されるケースがほとんどです。

担当の歯科医やクリニックと相談しながら矯正治療を進めましょう。

3. アンカースクリューの痛みはいつまで続く?

アンカースクリューの埋入後に痛みが出ると、いつまで痛みが続くのか不安に感じる方も多いでしょう。

痛みの出方には個人差もありますが、アンカースクリューの埋入後2~3日で痛みのピークを迎え、埋入後1週間ほどで痛みが和らぐといわれています。

 

アンカースクリューを埋入して2~3日はどうしても施術による炎症反応が起きてしまうため痛みが出やすくなります。

この期間は鎮痛薬(痛み止め)を活用して痛みを軽減できるようにしましょう。

 

また、月1~2回行なう調整後には痛みを感じることがあるといわれていますが、この痛みも2~3日程度で落ち着くことがほとんどです。

アンカースクリューの埋入後や調整後に、1週間以上痛みが続く場合や、痛みがどんどん強くなっているといった場合は、速やかにクリニックに相談してください。

4. アンカースクリューが痛すぎると感じたときの対処法

アンカースクリューによって強い痛みが出た場合は、どのように対応すると痛みが和らぐのでしょうか。

 

ここでは、アンカースクリューによる痛みが強く出た場合の対処法について解説します。

4-1. 処方された鎮痛薬を服用する

アンカースクリューの埋入後に鎮痛薬が処方されるケースも多く見られます。

鎮痛薬が処方された場合は指示にしたがって服用し、アンカースクリューによる痛みを和らげましょう。

 

痛みが心配な場合はあらかじめ担当の歯科医やクリニックに相談して処方しておいてもらうと安心です。

4-2. 痛みが強ければ歯科医に相談する

アンカースクリューによる痛みは、鎮痛薬を服用すれば十分コントロールできる程度の鈍痛がほとんどです。

 

万が一、鎮痛薬を飲んでも痛みが治まらない場合や痛みが強くなっている場合、腫れがある場合などはすぐにクリニックに連絡し、歯科医の判断を仰いでください。

細菌感染が起こっている可能性も考えられるため、症状が悪化しないよう早めに受診することを心がけましょう。

5. アンカースクリューの痛みを抑え、安全に使用するためのポイント

アンカースクリューによる痛みを抑えるためには日頃のケアが大切です。

 

ここでは痛みを抑え、アンカースクリューを安全に使用するためのコツを紹介します。

5-1. 丁寧に歯磨きをして口腔内の衛生環境を整える

痛みの発生を避けるためには、日頃から口腔内の衛生環境に注意することが大切です。

 

感染や炎症のリスクを下げるためにも、アンカースクリューの埋入前、埋入後は特に丁寧に歯磨きをして衛生環境を整えましょう

口腔内の衛生環境を良い状態にしておくことで、細菌感染のリスクを下げられます。

 

特に、埋入当日はアンカースクリューが定着しきっておらず痛みが出ることがあり、満足に歯磨きができないケースも珍しくありません。埋入前には入念に歯磨きをしておきましょう。

 

また、埋入したアンカースクリューの周囲は汚れがたまりやすいので、タフトブラシを使用して力を入れすぎないように優しく磨くことが大切です。

埋入後2週間はアンカースクリューがしっかり定着していない可能性があるため、力を入れて磨くことは避けてください。

5-2. 指で強く触ったり硬いものを食べたりすることを避ける

アンカースクリューを埋入した骨の環境や状態、アンカースクリューの埋入具合によっては、顎の骨にネジがしっかり固定されず不安定になることがあります。

 

ブラシや舌でアンカースクリューを軽く触ってもほとんどの場合は問題ありませんが、指で強く触ると抜け落ちる可能性があるため控えましょう。

 

また、術後すぐは硬いものや粘着性のある食べ物は避けるのが無難です。

5-3. 飲酒・喫煙を控える

アルコールを摂取すると血行が良くなるため、お酒を飲むとアンカースクリューによる痛みが増す可能性があります。

特に埋入直後は施術した部位が敏感になっており、痛みや腫れが悪化しやすくなるため注意が必要です。埋入後すぐは飲酒を控えましょう。

 

また、喫煙は歯周組織の再生を妨げたり、歯を支える骨の代謝を悪化させたりするおそれがあり、アンカースクリューが抜け落ちる原因になることがあるともいわれています。

埋入後すぐの喫煙は避けましょう。可能であれば、埋入前から定着までの期間は禁煙することをおすすめします。

6. まとめ|アンカースクリューの痛みが気になるなら早めに歯科医に相談しよう

歯科で使用するアンカースクリューとは、矯正治療において歯を効率的に移動させるために顎の骨に埋入する金属製の補助装置のことです。

 

アンカースクリュー自体は痛みが少ない治療法とされています。

埋入後に痛みが出る場合もありますが、術後2~3日が痛みのピークで、1週間ほどで和らぐのが一般的です。痛みがある期間は処方された鎮痛薬を服用し、痛みをコントロールするとよいでしょう。

 

一方で、歯根の損傷や口内炎、細菌感染による炎症、ネジの脱落などが原因で強い痛みを感じるケースがあるのも事実です。

鎮痛薬を飲んでも痛みが治まらない場合や、痛みがどんどん強くなるといった場合は早めにクリニックに相談してください。

 

アンカースクリューを安全に使用して痛みをなるべく発生させないためにも、口腔内を清潔に保ち、飲酒・喫煙を控え、アンカースクリューを指で強く触らないことが大切です。

鎮痛薬を飲んでも強い痛みがある場合や、痛みの増強・腫れが見られる場合、アンカースクリューが脱落した場合にはすぐにクリニックに連絡し、歯科医の判断を仰ぎましょう。

 

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